映画の中で語られる神話

風はこうして家をみつけた
How wind found a home

貝がらを耳にあてるとかぜの音が聴こえるのはなぜだろう・・・

子ども心に誰もが抱く素朴な疑問や自然への好奇心を思い出させてくれるこのお話は、先祖代々受け継がれる神話を語り続けてきたボブが、はじめて自分で創作した物語です。すべてのものには魂が宿るという考え方や独特の抑揚のリズムなど、ボブの中に脈打つクリンギットの神話語りの世界観がそのまま息づいています。

特に、「私たちは皆、寒い氷河時代を生きのびたほんの一握りの人間の子孫」、だから「私たちは皆同じ」ともすれば聞き逃してしまいそうなこの言葉には、ボブの大切な思いとメッセージが込められています。海辺で貝がらの中にかぜの音を聴くとき、このことに思いを馳せてみてください。

このお話は、詩人・谷川俊太郎氏の訳で『かぜがおうちをみつけるまで』(スイッチ・パブリッシング刊)として日本国内で出版されています。

森に還ったワタリガラス
Raven Walks into the Forest

 村の人々は困窮していました。先人からの教えを忘れ、自らの生き方を見失っていました。かつてこの村に突然現れ、戦士たちの命をいとも簡単に奪ってしまった大男の言い伝えも、すっかりと忘れていました。

 その村のある若い男は、毎日のようにギャンブルに興じていました。やがて持ち金をすべて使い果たし、家も失い、家族も、妻さえ失ってしまいました。

 悲しみに打ちひしがれた若い男は、森へと歩んで行きます。いくつもの山を越え、さらにもう一つ山を超え、ジグザグの山道を何日も歩き続け、ついに大草原の中にポツンとある家を見つけました。

 若い男は扉に空いた小さな穴からそっと覗き込むと、大男が背中を向けて座っているのが見えました。

 果たしてその大男の正体は…?

 祈りの大切さ、食の大切さ、古代より受け疲れた知恵と叡智の大切さを伝える、2019年の巡礼の旅のためにボブが日本各地で語った神話です。