本『Bite of the Mango』(両手を奪われても―シエラレオネの少女マリアトゥ)でアフリカ英語

Bite-of-the-Mango この本は次のような前書きで始まります。

 「僕の国の文化では、物語は、知識を授けたり、壊れた絆を修復したり、聞き手や語り手に変化をもたらしたりするために語られる。このマリアトゥの物語には、これらの要素がすべてつまっている。僕はこのような物語━人間の心はこんなにも強く、立ち直る力を秘めているのだという思い起こさせてくれるような物語を、ずっと待っていた。(後略)」 イシメール・ベア

 ”In my culture, every story is told with the purpose of either imparting knowledge, repairing broken bond, or transforming the listener and the teller. Mariatu’s story embodies all of these elements. I have been waiting for such a story, one that reminds us all of the strength and resilience of the human spirit.” by Ishmael Beah

 マリアトゥ・カマラは、1986年西アフリカのシエラレオネ生まれ。1991年から2002年まで、シエラレオネでは、激しい内戦が起こっていました。革命統一戦線(RUF)率いる武装した反乱兵たちが、村や畑を破壊し、何千人もの女性や子どもたちをレイプし、四肢切断し、殺害しました。マリアトゥも12歳のとき(1998年)に反乱軍に村を襲撃され、両手首を切断されてしまいます。

 そもそも、シエラレオネとはどのような歴史を持つ国なのでしょうか。本のなかで、マリアトゥがヤボムから自分が生まれた国の歴史について、説明を受ける場面があります。ヤボムは難民キャンプで働くソーシャルワーカーです。

 「話は、15世紀にさかのぼるわ。ひとりのポルトガル人探検家が、西アフリカ海岸に流れ着いた。その人が、今わたしたちがフリータウンと呼んでいるこの場所にたどり着いた時、天候は嵐だった。雷が山々に響き渡っていて、それを聞いた探険家は、まるでライオンがほえているようだと思った。そこで、この地をセラ・リオア(ポルトガル語で[ライオンのたてがみ])、つまり(ライオンの山)と名付けたの。(略)

 「現代史のほとんどにおいて、シエラレオネはほかの国の人たちのものだった。かつては、あなたがこれから行く予定のイギリスの植民地だったから、イギリス人は、シエラレオネは自分たちのものだと言っていた」
 イギリス人はシエラレオネに町を建設し、資源を採掘した、とマボムは説明してくれた。イギリス人はシエラレオネを近代化し、原題ヨーロッパの国のようにしようとした。(略)

 「つまりね、ヨーロッパの人たちは、シエラレオネ人のことを、ほかのアフリカの国の人たちと同じで、資源のひとつだとみなしたのよ……つまり、奴隷ってことね」
 ヤボムは、奴隷貿易で、アフリカ人たちがどのようにして船に乗せられ、無給の働き手として北米に送り込まれたかを教えてくれた。「たくさんの人が船の上でなくなったし、生き残った人たちは、長時間の非常に厳しい労働や、家族との別離に耐えなくてはならなかった。赤ん坊は母親から引き離され、夫と妻は離れ離れを余儀なくされた。やがて、奴隷制は非合法であると言われ始め、解放奴隷の多くがこの町に戻ってきた。だから、この町は<フリータウン(自由の町)>と呼ばれるのよ。これら元奴隷の人々は、シエラレオネ出身とは限らず、アフリカのあらゆる国の人々がいた。彼らはテムネ語やメンデ語は話さず、クリオ語を話したのだけれど、これは元奴隷たちがアメリカで覚えた英語がなまったものよ。」(略)

 「シエラレオネは、1960年代にようやくイギリスから独立を勝ち得たの。それは、あなたのお母さんが生まれるほんのちょっとだけ前のことなの。国際的に承認されたのは、さらにその十年後のことよ。政府の職員の間には汚職や買収がはびこっていたわ。」(略)

 「ここは、豊かな国よ。ダイヤモンドからボーキサイト(アルミニウムの原料となる鉱石)まで、資源がたくさんあるわ。でも、わたしたちは、とても貧しいの。資源を売ったお金は、普通の人たちまでは届かない。シエラレオネ東部と国境を接する国、リベリアは、シエラレオネで内戦が始まった時点ですでに内戦状態だった。そして、アハメド・フォディ・サンコーという男が、1991年にリベリアで革命統一戦線(RUF)を創設した。あなたは、4歳か5歳くらいだったはず。サンコーは、シエラレオネの政治家による権力乱用を終わらせることが目的だと言っていた。サンコーから見ると、政治家たちは、国の資源を海外に売って得たお金を盗んでいるように思えたの。でも、サンコーは、彼が泥棒呼ばわりしたどの政治家よりもひどかった。」(略)

「彼はダイヤモンドを掘り出し、武器と引き替えにリベリアに輸出した。そして、少年たちに兵士になるようにけしかけた。少年たちは、サンコーの手に落ちるまでに、抵抗する意思をくじかれていた。シエラレオネは、学校もない、仕事もないというあまりにも貧しい状態で、少年たちが未来に希望を持てるものがほとんどなかった。だから、少年たちは、サンコーの恰好の獲物となってしまった。」

 マリアトゥは現在トロントの大学で学んでいます。ユニセフの<武力紛争下にある子どもたちのための特別代表>に任命され、アメリカやカナダで、自分の経験を各種団体に伝えているそうです。同書の中ではクリオ語しかはなせなかった彼女が、英語を学び始める過程も紹介されています。両手を奪われても、自分の能力と可能性を信じ、希望を失わない彼女の姿から多くのことを学ぶことができるに違いありません。

http://youtu.be/bZed5Za8tRg?t=9m

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シエラレオネ共和国