映画『A Perfect World』(パーフェクト・ワールド)でアメリカ・テキサス英語マンツーマンレッスン

a_perfect_world ”Perfect”は、ラテン語facere 「なす。作る」から生まれた合成語。それにthrough「通って、通して」を意味する接頭語Perが付いた形。元々の意味は「やりぬく」。

 では、映画『A Perfect World』が描く”perfect”な世界とは、どのような世界なのでしょう。登場人物達は一体何を「やり抜こう」としたのでしょう。それは、すべての人がお互いの行動の背景にある心に思いを馳せ、奥深くまで理解しようとした世界だったのかもしれません。

 テキサス・レンジャーズのRed(レッド)は、8歳のときに不慮の殺人を犯してしまった少年の更生を願い、判事に働きかけ4年間の少年院送りにしたButch(ブッチ)のことを理解しようとしています。
 脱獄犯のButch(ブッチ)は、行き掛かりで誘拐してしまった、自分とは異なった宗教を信仰する8歳の男の子Phillip(フィリップ)のことを、そして、自らを捨てた父のことを理解し、受けとめようとしています。
 犯罪学者のSally(サリー)はButchそして、最初は敵対していた上司のRedのことを。Phillipは、アラスカの父から送られてきた一枚の絵葉書を彼に託そうとしたButchの心に、思いを馳せようとします。

 犯罪心理分析の手法なのでしょうか。追跡捜査の途中、SallyはButchになりきりこう話し始めます。それまでの高学歴の学者を連想させるような聡明な話し方から少し感じが変わり、口の開き閉めがやや減り、口の開き方も狭くなり、やや不明瞭な発音に変わります。南部訛りを強くして、Butchになりきろうとしているのがわかります。”I”(アイ)が、”Arh”(アー)、”I am”が”Arhm”(アーム)、”I was”が”Arhs”(アーズ)のように聞こえます。

 Sally Gerber:
 So, I am Robert Haynes.
 Everybody calls me Butch.
 I was born in Amarillo, but grew up in the French Quarter in New Orleans.
 I killed the man when I was 8.

 私をロバート・ヘインズだと思って
 「皆はおれのことをブッチと呼ぶ。
 アマリロ(テキサス)生まれ、ニューオリンズのフレンチクォーター育ち
 8歳のときに人を殺した」

 Butchが脱獄したのはアラスカで暮らしている父に会いに行くため。Butchは一度だけ父から送られてきた絵ハガキをPhillipに読んで聞かせます。南部アメリカ英語の特徴、timeがtarhm(タァーム)のように発音されています。

 Robert “Butch” Haynes:
 Dear Robert,
 Just wanted to tell you that me leaving has nothing to do with you.
 Alaska is a very beautiful place, colder than hell most all the time.
 Someday you can come and visit and we’ll maybe get to know each other better.

 愛するロバート
 おれが家を捨てたのはお前に関係のない理由だ
 アラスカは死ぬほど寒いが 美しい土地だ
 いつかおれを訪ねてこい
 互いを もっとよく知り合おう

RedはFBIのスナイパーに狙撃されてしまいます。追跡操作を通してRedの思いを理解したSallyはやりきれない思いを抑えながらも、励ますようにこう声をかけます。

 Sally Gerber:
 You know you did everything you could, don’t you?
 あなたは最善を尽くした、そうでしょ?

 Red Garnett:
 I don’t know nothing. Not one damn thing.
 さあ、どうかな。もう何も分からん。

 文法的には”I don’t know anything”と言うべきですが、”don’t”と”nothing”の二重否定で、より意味が強調されます。

 犯罪常習犯の父から守るためにButchを少年院送りとし、彼の更生を願ったRedですが、結果は彼の思い通りにはなならず、信じてきてものが全て否定されてしまったような結末となりました。「自分が正しいと信じていたことは、本当に正しかったのだろうか。自分は何も分かっていなかったのではないか。」そんな強い失意が”I don’t know nothing”という、二重否定の表現に現れているのかもしれません。

 Perfectとは結果を意味する言葉ではなく、「やりぬく」という状態を表す現在進行形なのかもしれません。Redがこれからも自分が正しいと信ずることを追い続けられるかどうか。それがPerfect worldを築いてきっかけになりそうです。Redの思いに気が付いた理解者、Sallyが現れたことが、RedにとってのPerfect worldの始まりなのかもしれません。

 監督のClint Eastwoodは、Sally Gerberの役割についてインタビューに応えてこう説明していました。

Women in the films of the 40s were much more interesting than those of the 50s, 60s, 70s and 80s. And this is the direction in which we worked on the character of Laura Dern. I wanted her to actively participate in the investigation, I didn’t want her to be a jellyfish, or a decorative element, or the gal on the job who adds to the mistakes or gets into situations that only men will be able to get her out of. I wanted her to have a point of view, opinions, a more open conflict with me, and above all not a love story.
『Clint Eastwood: Interviews』より
(40年代の映画に登場する女性たちは、50年代、60年代、70年代、そして80年代の女性よりもずっと興味深かった。40年代の女性、これがローラ・ダーンが演じた役(Sally Gerber)の方向性なのです。彼女には積極的に操作に参加して欲しかったが、意思が弱い人、お飾り的な存在、余計な過ちを犯したり、男性でしか救い出せないような状況に陥ってしまう職場の女の子のような女性を演じて欲しくはなかった。自分の見解、意見を持ち、私と口論を交わし、そして恋愛ドラマにはならない、そういう女性を演じて欲しかった。)

 自分自身の見解と意見をもち、衝突を恐れず意見をぶつけあう。お互いの心をより深く理解するにためには、必要なコミュニケーションの方法なのかもしれません。

A Perfect World trailer

https://youtu.be/_Qm-UhA3b4g