名作との出会いは、人との出会いに似ている

617CvnYX+kL 「本当だったら読んでおくべきだったけど、でも多分読まなかった名作文学の簡単な内容」

 少々耳が痛くなるような、でもちょっと気になるタイトルの本がありまし た。

 原題は『Abridged Classics: Brief Summaries of Books You Were Supposed to Read but Probably Didn’t 』。著者は漫画家のジョン・アト キンソンさんです。

 アトキンソンさんのブログはこちらからご覧いただけます。

 ▽Wrong Hands | Cartoons by John Atkinson

 本の扉には『トム・ソーヤーの冒険』の著者として知られるマーク・トウェ インのこんな言葉が記されています。

 ”Classics” A book people praise and don’t read.
 (『名作』皆が賞賛するが、読んでいない本のこと)

 「推薦図書」などの呼び方で、これまでたくさんの世界文学のタイトルを 目にしてきました。ETC英会話の先生の中にも、英文ライティングの上達のた めに、名著を読むことを薦める方がいらっしゃいます。

 残念ながら、実際の読むことが出来た「推薦図書」はほんの一部。名作を じっくりと味わう充分な時間が取れなかったり、他に優先的に読まなければ ならない本があったり。名作を放置してきた理由は様々あるようです。

 ある人との出会いが、その後の人生を大きく変えることがあります。でも、 そんな新しい出会いが生まれるには、ちょっとしたきっかけが必要です。名 作との出会いも、その「きっかけ」が必要なのかもしれません。

dfca68-20160321-abridgedclassics アトキンソンさんのこの本は、今まで見過ごしていた名作に興味を持つきっ かけを作ってくれそうです。

 同書は、『白鯨(Moby Dick)』、『戦争と平和(War and Peace)』、『1984 年(1984)』、そして『武器よさらば(A Farewell To Arms)』など、101に及ぶ 世界文学の名作の内容を、著者の親しみやすい漫画とともに、ほんの2、3文 で紹介しています。

 「えっそれだけ!?」という短さだったり、短文だけど作品の本質的を捉え ていたり、思わず笑ってしまうような秀逸なジョークを含んでいたりして、 まだ読んでいない名作に思いを膨らませながら、楽しむことができます。

 たとえば『白鯨』(1851年)は、アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルが 捕鯨に従事した体験をもとに書いた長編。たびたび映画化されています。ま た原題のMoby Dickはレッド・ツェッペリンの曲名としても有名です。

 この小説をアトキンソンさんは、次のような短い文章で紹介しています。

 Man vs. whale. Whale wins.
 (人間 vs 鯨。鯨が勝ちます)

 また、『戦争と平和』(1869年)は、帝政ロシアの小説家で思想家であるレ フ・トルストイによる大河小説。ロシア貴族の繁栄と没落。大地に生きる農 民たちを描いています。登場人物は559人。2016年にはBBCが2年半をかけてド ラマ化しています。アトキンソンさんによるこの小説の概略は次の通り。こ れはもはや本人の短い読後感想のようでもあります。

 Everything is sad. It snows.
 (全てが悲しい。雪が降っています)

 『1984年』(1949年)はジョージ・オーウェルの長編小説。架空の超大国で 「ビック・ブラザー」率いる党が、歴史や個人の思考まで支配する全体主義 社会の恐怖を描いています。

 Vision of a dystopian future. (now called Tuesday)
 (暗黒郷的未来の情景(今は火曜日のこと))

 これは、アトキンソンさんのブラックジョーク。本書が描いた数十年後の 未来は、今では現実となり、火曜日、つまり普通の日の出来事、暗黒郷は日 常となっている、という意味なのでしょう。

 アトキンソンさんの解説で特に目に留まったのが、アーネスト・ヘミング ウェイの『武器よさらば』(1929年)です。この小説は、ヘミングウェイ自身 のイタリア戦線の従軍記者の時代の体験をもとにして書いた作品。第一次世 界大戦下における、米国兵と英国人看護婦の悲恋を描いています。

 There are no winners in war. And very few adjectives.
 (戦争には勝者はいない。そして形容詞はとても少ない)

71SSXkR7VXL 「戦争には勝者はいない」の意味はお分かりになると思います。では、 「形容詞はとても少ない」とはどのような意味なのでしょうか?

 ヘミングウェイの文体は、華美な形容詞を出来るだけ使わずに、単刀直入 に表現することで知られています。これは原書を読まないと、気づけないこ となのかもしれません。

 ヘミングウェイは、マーク・トウェインのアドバイスに従ったとも言われ ています。トウェインはできるだけ無駄な言葉を省き、わかりやすく単純で、 短く簡潔な文章を書くことを推奨していました。彼の次の言葉が有名です、

 When you catch an adjective, kill it.
 (形容詞を見つけたら消してしまいなさい

 No, I don’t mean utterly, but kill most of them–then the rest will be valuable.
 (勿論全部という意味ではありません。でも大部分を。すると残った言葉が  価値を持つようになります)

 もし、興味を持った本がありましたら、ぜひこの機会に手にとってみては いかがでしょうか。

(*)関連リンク

▽アトキンソンさんのブログ
Wrong Hands | Cartoons by John Atkinson

※ブログタイトル”Wrong Hands”の由来は2つ。1つは、“falls into the wrong hands”(悪人の手に落ちる)というイディオムから。もう1つは彼自身 が左利きであることから。漫画も左手をつかってコンピューターに直接書き 込んでいるそうです。

『Abridged Classics: Brief Summaries of Books You Were Supposed to Read but Probably Didn’t 』John Atkinson著

翻訳本
『世界名作“ひとこと”劇場 読んどけばよかった、でもきっと読まない、名 作文学の短すぎるあらすじ101選』 ジョン・アトキンソン (著), 川合亮平 (翻訳), 東 佑亮 (翻訳) 

※翻訳をされた川合亮平さんは『「なんでやねん」を英語で言えますか?』の 著者でもあります。日本語に訳すと伝わりにくくなってしまうアトキンソン のジョークを、大阪弁も交えながら翻訳本で新たな笑いを生んでいます。

(*)参考リンク
Ernest Hemingway’s Top 5 Tips for Writing Well

What Makes Hemingway Hemingway?

Directory of Mark Twain’s maxims, quotations, and various opinions:

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