『赤鼻のトナカイ』って百貨店のコピーライターが作ったって知ってた?

ロバート・ルイス・メイ

ロバート・ルイス・メイ(Robert Lewis May:1905年7月27日 – 1976年8月10日)(写真:wikipediaより)

 12月に入り街中にクリスマスソングが溢れています。

 「真っ赤なお・は・なのォ~、トナカイさんワぁ~♪」

 さて、『赤鼻のトナカイ』で知られるこの曲の原題をご存知ですか?

 答えは『Rudolph the Red-Nosed Reindeer』(ルドルフ 赤鼻のトナカイ)。原題には「ルドルフ」(Rudolph)というトナカイの名前がついています。

 この歌の元になっているのは同名の童話で、創ったのはロバート・ルイス・メイ(Robert Lewis May:1905年7月27日 – 1976年8月10日)。シカゴにある百貨店兼通信販売・モンゴメリー・ワード社で、広告・宣伝コピーライターとして働いていました。

 モンゴメリー・ワード社では毎年、お客様に無料で配布するクリスマス用の絵本を外注していました。1939年の初頭、メイは上司からこんな相談を受けます。

 「絵本を自前を作れたら、制作費を大幅に削減できると思う。従来の冊子よりもっと良いクリスマス・ブックの提案をしてもらえないだろうか」

 当時、メイは妻のエブリンと4歳になる娘のバーバラと三人暮らし。エブリンは癌を患っていまいた。

 (子ども達に喜ばれるには、動物を主人公にしたものがいい)

 メイは、娘が大好きなトナカイを主役にして、その赤い鼻で暗い夜道を照らしサンタを助ける「ルドルフ」の童話を思いつきます。

 翌朝、メイは早速上司に彼のアイディアを説明します。しかし、上司の反応は否定的なものでした。

 “For gosh sakes, Bob(*), can’t you do better than that?”
 (たのむよボブ。もっと他に良いアイディアはないのか?)
  (*)BobはRobertの愛称

 しかし、メイは諦めることができませんでした。そこで、社内のアート部に所属する友人デンバー・グレン(Denver Gillen)に、赤鼻のトナカイの絵を描いてくれるように頼みます。グレン、メイ、そして娘のバーバラの三人は、早速その週末、シカゴ動物園を訪れ、トナカイをスケッチしました。

 そして、童話の主役となる赤鼻のトナカイ、ルドルフを描き上げたのです。

 週明けの月曜日、メイはそのスケッチとともに、再度上司に提案をしました。

 上司はしばらく考えた上で、次のように答えました。

 “Bob, forget what I said and put the story into finished form.”
 (ボブ、私が前に言ったことは忘れてくれ。この物語を完成させよう)

 ところが、その後妻エブリンの容態が悪化、7月に亡くなってしまいます。

 メイの心情を慮った上司は、メイの肩をたたきながら優しく語りかけます。

  “Bob, I can understand your not wanting to go on with the kids’ book. Give me what you’ve got and I’ll let someone else finish it.”
 (ボブ、童話本の制作を継続できる心情でないことは理解できる。今まで出来上がったものを私に提出してくれ。他の者に引き継がせよう)

 しかし、童話『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』は、メイにとって以前にもまして必要なものとなっていました。童話創りに没頭することで、妻を失った悲しさから逃れることができたからです。妻が死亡した翌月の8月、童話は遂に完成します。

 童話『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』は大人気となり、その年に240万部が配布。7年後の1946年には再発行され、360万部がモンゴメリー・ワードの買い物客に配布されました。

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少女に『赤鼻のトナカイ、ルドルフ』を読み聞かせるロバート・ルイス・メイ(Robert Lewis May)―Chicago Timesより

 そして、1948年、メイの義理の兄弟にあたるジョニー・マークス(JohnnyMarks)が、この童話に基づいて作詞作曲。「歌うカウボーイ」として知られていたジーン・オートリー(Gene Autry)が歌を吹き込んだ「赤鼻のトナカイ (Rudolph, the Red-Nosed Reindeer)」が、1949年にリリースされて大ヒット。クリスマスソングの中でも、「ホワイト・クリスマス」に次いでレコード売上の多い曲となったそうです。

 サンタクロースのモデルといわれる、セント・ニコラウスに関しては、紀元前4世紀より、様々なエピソードが語り継がれています。20世紀になって、このサンタクロースの伝説に「赤鼻のトナカイ」の要素が、加わったことは、とても興味深いことです。

 しかも、その物語はメイの妻、娘、友人、上司などの係わり合いによって生まれたことも、大切なことがらなのかもしれません。また、ミシガン湖から大量の霧が発生して、前方が見えづらくなる、シカゴと言う土地柄も、「トナカイの赤鼻で夜道を照らす」という発想に影響を与えたのでしょう。

 下記のリンクは、『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』のオリジナル版を紹介、朗読してくれている動画です。挿絵は勿論デンバー・グレンのイラストです。

https://youtu.be/3saRSCLp5gI

 また、ご興味のある方は、『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』を原書で読んでみませんか。AmazonではKindle版もあります。

※”Rudolph, The Red-Nosed Reindeer” Robert L. May (著)

 『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』が生まれた経緯については、 1975年12月22日付のゲティスバーグ・タイムズ紙に、「Robert May Tells how Rudolf,
The Red Nosed Reindeer Came into Being」と題した記事の中で、メイ自身が寄稿しています。併せてお読みください。

※Robert May Tells how Rudolf, The Red Nosed Reindeer Came into Being」

 そして、ジョニー・マークスが歌う『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』はこちらで視聴できます。

 大切な妻を失った悲しみを乗り越え、メイが書き上げた『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』。この曲が街で流れてきたら、これからはメイのことを思い出し、より深みをもって聴くことができるかもしれません。

※『Rudolph the Red-Nosed Reindeer』 by Gene Autry

https://youtu.be/7ara3-hDH6I

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